白鳥異伝(はくちょういでん)

白鳥異伝

白鳥異伝

作者の荻原規子(おぎわら のりこ)さんは勾玉三部作と呼ばれている、
古代日本を舞台にした物語を書いていて、白鳥異伝は
一作目 空色勾玉(そらいろまがたま) (〈勾玉〉三部作第一巻)(そらいろまがたま)
三作目 薄紅天女(うすべにてんにょ)
の間に執筆された二作目にあたる物語。
僕は三作の内で、この話が一番好きです。
内容はヤマトタケル伝説を下敷きにした和風ファンタジーで、
前作の空色勾玉から二百年ほど後のお話。
前作を読んでいなくても楽しめるとは思いますが、
出来れば先に前作「空色勾玉」を読んでいた方が、より楽しめると思います。

物語は三野(みの)の長の一族の娘として育った遠子(とおこ)と、
その家に拾われて遠子とは双子の様に育てられた小倶那(おぐな)という少年を中心に、
遠子の旅に同行する管流(すがる)や遠子の幼なじみの象子(きさこ)、
遠子の従妹で巫女の明姫(あかるひめ)、大王の息子である大碓皇子(おおうすのみこ)、
大碓皇子の従者で小倶那を鍛えてくれる七掬(ななつか)など、
様々な魅力的な登場人物によって、進んでいきます。

この本は最初は図書館で借りて読んだのですが、
あまりに面白かったので自分でわざわざ買い直し、今も手元に置いてあります。
古代の日本に興味がある人、ファンタジー小説が好きな人などは特に楽しめるんじゃないかと。
最近、新書版も出たようですが、
白鳥異伝 上 (トクマ・ノベルズ Edge) 白鳥異伝 下 (トクマ・ノベルズ Edge)
個人的には挿絵が無くイメージが限定されない
ハードカバー版(一番上で紹介しているもの)がお勧めです。

アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

本を読んで久しぶりに感動して涙が出そうになった。
裏表紙に書いてある本の紹介に「全世界が涙した現代の聖書」なんて一文があるのですが、
読む前は正直「ベストセラーにありがちな大げさな文句だな」とひねた目で見ていた。
まあ、実際ちょっと大げさなんですが、それでも読んでいてウルッと来た場所が二ヶ所あります。
読んだ事の無い人の為に、詳しくは書きませんが、
物語の後半、主人公のチャーリイが母親に会って自分の思いを叫ぶ場面と、
いじめられていたチャーリイをパン屋の仲間が助けてくれる場面。
自分にとってはこの二ヶ所の場面だけで、
500ページ近い物語を読む価値はあったと思う。
他にも精神遅滞だったチャーリイが超知能を手に入れた事によって初めて知る周りの世界、
精神遅滞だった自分自身に対する皆の視点、
辛い過去の記憶、天才になる事によって無くしたものに気づく自分、
女性に対する未知の感情に対する苦悩、周囲と打ち解けられない孤独など、
色々考えさせられるテーマがたくさんつまっていて面白い。
まだ読んだ事が無い人には、是非読んでもらいたい名作だと思います。

最後にこれはどうしても語っておきたいのですが、
訳者の小尾 芙佐(おび ふさ)という方の日本語訳は、素晴らしかったです。
外国小説の訳にありがちな平坦さが無く、日本の小説のように普通に読めました。
外国小説はあのつまらない訳文が苦手で、なかなか好きになれない自分にとってこれは大きかったです。