アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

本を読んで久しぶりに感動して涙が出そうになった。
裏表紙に書いてある本の紹介に「全世界が涙した現代の聖書」なんて一文があるのですが、
読む前は正直「ベストセラーにありがちな大げさな文句だな」とひねた目で見ていた。
まあ、実際ちょっと大げさなんですが、それでも読んでいてウルッと来た場所が二ヶ所あります。
読んだ事の無い人の為に、詳しくは書きませんが、
物語の後半、主人公のチャーリイが母親に会って自分の思いを叫ぶ場面と、
いじめられていたチャーリイをパン屋の仲間が助けてくれる場面。
自分にとってはこの二ヶ所の場面だけで、
500ページ近い物語を読む価値はあったと思う。
他にも精神遅滞だったチャーリイが超知能を手に入れた事によって初めて知る周りの世界、
精神遅滞だった自分自身に対する皆の視点、
辛い過去の記憶、天才になる事によって無くしたものに気づく自分、
女性に対する未知の感情に対する苦悩、周囲と打ち解けられない孤独など、
色々考えさせられるテーマがたくさんつまっていて面白い。
まだ読んだ事が無い人には、是非読んでもらいたい名作だと思います。

最後にこれはどうしても語っておきたいのですが、
訳者の小尾 芙佐(おび ふさ)という方の日本語訳は、素晴らしかったです。
外国小説の訳にありがちな平坦さが無く、日本の小説のように普通に読めました。
外国小説はあのつまらない訳文が苦手で、なかなか好きになれない自分にとってこれは大きかったです。