20世紀ポップ・ロック大全集Vol.3 変貌する’60年代の黒人音楽 −ポップ・ソウルと南部R&Bの流れ−

図書館で続きを借りてきました。
前回はVol3が他の人に借りられてましたが、今回はOK。


この巻は黒人のソウル・ミュージックが中心ですね。


1960年代始めのアメリカでは黒人音楽が高い人気を獲得していましたが、
1964年になるとビートルズを始めとするイギリスのロックバンドがアメリカに上陸。
ヒットチャートを席巻します。
その状況に危機感を覚えた黒人ミュージシャン達が新たに見出したのが、
黒人の教会で歌われる宗教音楽「ゴスペル」です。
ゴスペルをポップミュージックに取り込んだ代表的なアーティストがレイ・チャールズ
その影響を受けた黒人ミュージシャン達が活躍し始めます。

その中心になったのがベリー・ゴーディが率いるミシガン州デトロイトモータウンレコード。
ポップなソウルミュージックで人気を博します。
このモータウンレコードのやり方がなかなか興味深いです。


優秀な作曲家達を集めてお互いを競わせる事で楽曲の質を高め、
それらをファンクブラザーズというニックネームを持つ
優秀なバック・ミュージシャンが支えるというやり方でヒット曲を連発。
更にまともな教育を受けていない黒人のミュージシャン達にマナー講師や振付師をつけて教育し、
洗練された振る舞いや動きを教えてアーティスト養成教室と呼ばれるものまで作ってます。
ヒットさせる為のプロセスを明確に描き、実践したのですね。
このモータウンレコードからは、
スモーキーロビンソン&ミラクルズ、マーヴェレッツ、スティービーワンダー、
メアリー・ウェルズ、マーサ&ザ・ヴァンデラス、
テンプテーションズスプリームスなどが出てきました。


しかし、モータウンレコードの音楽はあまりに洗練されすぎて、
やがて人工的なものになっていきます。
そして、そんな音楽に満足できずもっと本能的な音楽を求める人々が
アメリカ南部のメンフィスに集まります。
代表的なのがスタックスレコードです。
モータウンレコードのような管理されたやり方ではなく、
ミュージシャンの自主性を重んじるレコーディングが特徴。
そのスタックスのサウンドを支えたリズムセクションが、
ブッカー・T&MG'Sという白人と黒人の混成バンドです。
彼らは大勢のアーティストのセッションに参加しましたが、
その中でも有名なのがサム&デイヴ、オーティス・レディングウィルソン・ピケットです。


メンフィスの南東200キロのところにあるマッスルショールズという町にあるフェイムスタジオ。
リック・ホールが設立したこのスタジオはソウルの歴史にとって重要です。
ここでレコーディングしたパーシー・スレッジが有名になったのをきっかけに、
ウィルソン・ピケットが訪れレコーディングして生まれたのが、「マスタング・サリー」と「ダンス天国」。
また、アレサ・フランクリンがここでレコーディングして作った
シングルレコード「あなただけを愛して」は大ヒットを飛ばし、
彼女は1967年度の売り上げ記録でシングル、アルバム、R&B部門で1位を取り、デトロイトで表彰されました。


ソウル・ミュージックとは黒人が白人の社会の中で自らの存在を主張する為に生まれた音楽です。
その根底にはあるものは「黒人もいつか白人と対等になれる」という楽観主義でした。
しかし1968年4月、公民権運動の指導者キング牧師の暗殺によってその幻想は崩壊。ソウルミュージックは死を迎えます。
ここから黒人音楽はより黒人のアイデンティティを強調したものに変化し、
ジェームズブラウンによるファンクミュージックという新たな方向性を見出します。


ソウルミュージックの歴史的な役割は終わりましたが、
その豊かな音楽性と理想主義は様々に形を変えながらポップミュージックの中に生き続けているのです。
という感じに締められてVol.3は終わります。