20世紀ポップ・ロック大全集 Vol.5 愛と平和のサイケデリック・ロック -ドラッグ・カルチャーとしてのロック-

60年代半ばのアメリカ西海岸で生まれたサイケデリック・ロック
サイケデリック・ロックとはLSDマリファナ(当時は合法)などのドラッグによって、
激しい幻覚症状を引き起こしたサイケデリック(意識が変革される)な状態を表現する音楽。

  • グレイトフル・デッドのフィル・レッシュ
  • ザ・バーズのロジャーマッギン
    • 「幻想体験を再現したようにすべてが融合したような音楽、五感が入り混じり色や音を味わうという感じ」
    • 「ふわふわととらえどころがなくて、リズムやメロディーもあいまい」
  • ビッグ・ブラザー&ホールディングカンパニー
    • 「理性が音の彼方に飛んでいくような音楽」


なんとなくわかるでしょうか?
漫画などでドラッグでぶっ飛ぶとかハイになるとかそういう表現が使われますが、
ああいう感じだと思われます。
僕はこのDVDを見てて、
永井豪の漫画「デビルマン」で不動明が親友の飛鳥了に誘われた酒池肉林なパーティで、
理性と恐怖が飛び交う中デビルマンに目覚めるシーンを思い出しました。


何とか1時間近く頑張って見たんですが、
僕にはどうしてもこのサイケデリック・ロックが受け入れられませんでした。
ドラッグをやってる人の目というのは死んだ魚のような目で、どこを見てるのかわからず、
生理的な嫌悪感を引き起こしますし、
そんな目で真面目に「神と天使の声が聞こえる」とか、
「ドラッグが広まれば世界はよりよくなると思う」とか、
「意識を開放する扉が永遠に開かれた」とか言われても普通に引きますよ。
ドラッグに溺れて単なる現実逃避をしているようにしか見えないのは
僕の価値観が狭いからでしょうか?


そんな中、ちょっと面白かったのが
ジェファーソン・エアプレインのグレイス・スリックが語ったこの言葉

私が幼いころ聞かされたのは薬で楽しい冒険ができるというお話だった。
不思議の国のアリス」にはきのこや水ぎせるが出てくるし、アリスは丸薬みたいなものをかむ。
オズの魔法使いはけし畑の彼方にエメラルドの街を見せ、
ピーターパンは白い粉をまいて子どもと空を飛ぶ。
こんな話を聞かせておいてドラッグはだめと言うの?


この解釈は「なるほど、こういう考えもあるのか」と妙に納得させられました。
だからといってドラッグを肯定するわけではないですけど。


サイケミュージックは、
愛と平和を謳いオルタモントで開催されたウッドストック・フェスティバルに代表される
野外演奏でのドラッグによる暴力沙汰によって勢いを無くし、70年代を迎えると共に終焉を迎えます。
ザ・バーズ、ザ・グレイトフルデッドはカントリーなスタイルに変わり、
カントリー・ロックはやがてウエストコートサウンドへと移行。
「ドラッグが見せたつかの間の夢は終わりヒューマンビーインもその後の混乱も時代のうねりに呑み込まれていったのです。」
と締められてこのDVDは終わります。